山の彼方の空遠く
ドイツの詩人、カール・ブッセ作の詩に深い意味を感じるようになったのは妻みっちゃんの死後です。
原文
Über den Bergen Karl Busse
Über den Bergen weit zu wandern
Sagen die Leute, wohnt das Glück.
Ach, und ich ging im Schwarme der andern,
kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen weti weti drüben,
Sagen die Leute, wohnt das Glück.
意味どころか発音さえできないドイツ語の原文を訳した上田敏氏の才能に尊敬の意を表し再三の記載です。
山のあなたの空遠く
「幸さいはひ」住むと人のいふ。
噫ああ、われひとと尋とめゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸さいはひ」住むと人のいふ。
幸せという静かな感情が人生の総てを左右する力を持っていると考えています。
若い頃、知識も教養も未成熟の中、山の彼方にあろう幸せを想い描いた歌があります。
小坂明子 曲名:あなた
彼女の清らかな声に載せて歌われる幸せの形を想い描いた十代の後半から50年の時を経て、山の彼方に在った幸せの一端を経験しながらも気付かずに過ぎ去ったのは、僕の無知に他ならないのです。
人の誰しもが経験する快感は、創造主たる神(無神論者だから象徴的に)から人に与えられたご褒美。
メカニズムは※1ランナーズハイにおける防御本能の一種であり、極度の苦痛を避けるシステムとして脳内麻薬の一種が分泌されることで得る快感は性交渉のそれと同様であるとされてます。
若い頃にはランナーズハイ的快感を不健康で安易な方法として快楽に求めがちです。しかし、過ちであるか否かは歴史の中でのモラルの変化にも依り、おおらかだったと思われる天照大神前後の神話の世界にも見る事ができましょう。
幸せを快感と同意義では語れませんが、小坂ちゃんの歌の景色を創造すると、或る種の快感を覚えましょう。
※1 ランナーズハイ:マラソンにおける長時間の苦痛を和らげるために分泌される脳内麻薬で高揚した様。
山の彼方の空遠くねぇ〜
上田敏さんの訳に尊敬を。
ブッセの詩に続きをつけてみた。
山の彼方に辿り着き 振り返った過去に幸いありと知る 嗚呼悲しきかな 悲しきかな
前に彼方無く、後ろに彼方無し 嗚呼寂しきかな 寂しきかな
by kattyan62 | 2013-03-18 17:23