笑顔満面に現れたVIP


土曜日、習い事を済ませてきたと報告があり、その証拠は墨痕として姉孫の足にあった。

 二人のVIPは約束事のようにパソコンを分捕り、それぞれ好みのyoutubeを選んで『かっちゃん、おいで』と呼ぶ。
呼ぶ理由は文字を打ち込ませるためだった。例えば[マリオ]とか[面白猫]に加えて僕の知らない歌手だったりする。

 暫くして飽きたであろう頃を見計らってA4紙の三枚に書いたものを見せた。
内容
メニュー  カッチャン・レストラン
朝食   
食パンかパンケーキ       5円
飲み物  ココア            5円
ミルクコーヒー            5円

昼食 
スパゲッティ・ナポリタン 10円
     〃    カルボナーラ    10円
 きつねうどん(当店自慢) 10円
 ちくま風蕎麦                  10円

夕食
  唐揚げ          15円   
  サラダ            5円

 二人は大喜びでメニューを見、昼食の注文をしたのだった。
姉孫、カルボナーラに妹孫はきつねうどん。二種類の食事を用意するのは忙しい。 それなのにですよ、妹孫はベッドの上から呼ぶんです。
妹孫『かっちゃ〜ん』

 僕「う〜ん、なに?」と台所から。

妹孫『明日の朝のメニューを決めたから、ちょっと来て』

 僕「今、忙しいからメモに書いといてんか」

妹孫『うん、判った』  
数分後
妹孫『かっちゃん、メモに書いたから見て〜』

 僕「今、忙しいちゅうてるやろ、そこらに貼っといて」

妹孫『うん、判った』

妹孫『かっちゃ〜ん、セロテープ』

彼女はベッドの上から動かないのだった。年寄りかお前は〜と姉孫。

 メニューが決まったところでモールへ出掛けた。
店内は土曜日だってのに時間帯が良かったのか閑散としていた。
いつものゲーセンの前で二人でひそひそ話していたのを見付けたので聞いた。
ママとゲームはしないと約束したそうなのだが、小さな約束は破るためにあるのだとは言わずにお金を持たせた。かっちゃんとの秘密だからママには内緒だぞと念を押しておいた。そしてママとの約束を破ってもいいとかっちゃんが言ったときだけだからねと付け加えたが、話を完全に理解したのか確認する前にリュックを僕に持たせて走り出していた。

 帰りに二人の希望で花火を買った。
ゲームをしたことより花火を買ったことの方が印象にあるのだろう、食事中も花火の話をし、暗くなるのが待ち遠しいようだった。
 夕飯の用意に掛かった。唐揚げと野菜サラダだが、野菜サラダは姉孫が作ると言ったのを受けて助手に徹した。キュウリを刻む手が危うい。
「左は猫の手」と教え、包丁は凄く切れるから、触るだけで切れるからね」

大鉢と大皿に山盛りのサラダが出来た。だがトマトが食べられない二人の好みはキュウリの緑の他はベージュなのだ。
唐揚げとキュウリ揉みを作るも、酢を効かせることができず、砂糖を加えて和らげたのだった。

姉孫『かっちゃん、唐揚げの色が薄くない?』  

 僕「うん、もう一度揚げる二度揚げって手法なんよ。この方が美味しいんだから」

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 待ちかねた夜になった。
何時まで起きていてもいい、観たいテレビもあるしyoutubeも観たい、i phoneのゲームもしたいし花火もしたい。仏壇のロウソクを持ち、花火を数本だけ選んで裏に出た。 
アスファルトの凹凸にローソクを差し、姉孫がマッチを擦る。
お年寄りは既に睡眠モードに入り、電灯が消えている部屋もあるのだが、二人のキャーキャーとはしゃぐ甲高い声に、申し訳ないが諌めるつもりは毛頭なく、年に数度のことですからと思った。
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 数本の花火は直ぐに終わり、ロウソクの火が風に消えると騒ぎ、花火を追加しないくせにロウソクの火を灯し、それすらも遊びになっていて、大人の居る時だけだからと何度となく念を押した。
狭い浴室に三人は窮屈で二人は交代で入って来る。洗うと云うより遊んでいるのだ。一人が入っているその間はi phoneを占有できるのです。入るのも待つのも楽しい時間にしてやりたいと思っての計画なのだ。

 寝るまでの時間、それぞれが好みのyoutubeを観ていると、妹孫は姉孫の笑う声に釣られてやってきては姉孫の邪魔をする。
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 僕は床に寝るからと言うのを姉孫は『ええのん?』と気遣う。
狭いけど三人に寝てもええよと言うが寝込んでしまうと蹴飛ばされるのは必至。「ええねん」と答えておいた。
深夜、1時半まで起きていた姉孫が寝入った。立ってテレビを観ていたら姉孫が小さくイビキをかき、半目を開いて熟睡したようなのでテレビを消し寝ることにした。

 今朝、妹孫の朝は早い。
お腹が空いたようで僕の横に寝転んでi phoneに触って空腹を誤摩化している。姉孫を起こしたくなかったのだそうだ。9時を過ぎ、姉孫を起こした。
姉孫はミルクコーヒーに食パン。妹孫はココアと目玉焼きが二個で既に代金を箱に入れていた。
昨夕にサラダを出し、僕も姉孫と同じメニューにソーセージを焼いてそれぞれに分けた。
食後、直ぐにパソコンに遊び、i phoneのアプリに酔う。

 今日は駅まで往復する元気が無いからママに迎えに来るように電話をしてと頼む。二人は6時半に来るように言った。
早く迎えに来て欲しくないのだが帰らねばならないことも知っている二人だった。
帰る時間が迫っている。
姉孫『かっちゃん、ちくま風蕎麦って直ぐに出来るん? お腹が空いてん』
いつもの僕の量の二倍を茹で、ツユを作った。
市販の麺ツユに味醂を加え煮こぼしてから水で冷やした。
それぞれの椀に卵を割るように言うと、彼女らにはそれすらも遊びで、嬉々として卵を手に取った。姉孫は片手で割入れ、『初めてやねん片手で割ったの』と嬉しそうだった。

 シンクの洗い物をしようかとした時に迎えのママが顔を出した。
妹孫『これ、私が作ったよ』とストラップを見せた。
三つ編みにした皮に赤いビーズを数個付けたところで『私もしたい』と言うのを受け、途中で投げ出すだろうと思いつつ見ていると『おもしろ〜い』と言って仕上げてしまったのだ。流石はこれには驚いた。僅か7歳で面倒臭い作業をクリアしたのだ。
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妹孫の偉業とも思うのを詳細に娘に告げると一言『パパ似だから』
自分と姉孫の質はアンタに似たのねと言った。
兎も角もブログには新鮮な内にと開いたが今回は疲れた。訪問は明日以降にさせてくださいね。

 壁に貼ったメニューが風に泳いでいる。二人が去った後の部屋は白々としている。次の連休はいつなんだろうとカレンダーを見た。
 
  
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by kattyan62 | 2012-05-20 20:55