Merry Christmas


二十歳前後の今日

 心斎橋近くの病院のベッドで足の痛みに耐えていた。
あれは繁華街のネオンが瞬き始めた頃、日本の名車ホンダ・スーパーカブを駆って御堂筋を南下していた。
それは、そごう百貨店の南端と大丸百貨店の間の交差点で起こった事故の結果だった。
ガツンと衝撃を受け、信号の少し南側に落ちる空中の記憶もある。ドスンと落ちた時の記憶も残っている。
車を運転していた人が奈良まで帰るのに渋滞で遅れ、大丸への納品もあり急いでいて後方を確認せずに左に曲がったために、ガードレールと車に挟まれてしまったのだったが、骨折もなく、両足甲の打撲だけで済んだ。

 大丸百貨店前の御堂筋に落ちた。直ぐに『兄ちゃん、動いたらあかん。直ぐに救急車が来るさかいな』と火の点いたタバコをくれたオッチャンの息が酒臭かった。頭に真っ赤な三角帽を冠り、顎に黒いゴム紐が食い込んで、話す度に深くなる二重顎が可笑しかったが痛くて笑えないながら、タバコを深く吸った。

 お母ちゃんより早く知人のオバチャンが来てくれた。小さな手帳の電話番号から警察官が片っ端から電話したことを後で聞いた。家には電話がなく、周り回って聞いたとお母ちゃんから聞いた。
オバチャンはお母ちゃんを誘い買物に出掛けた。二人が両手に一杯の荷を持って帰ってきた。
家にそんなお金のないことを知っている。オバチャンが買ってくれたそうだ。
オバチャンには11人の子どもが居て、夫は鉄工所を経営していることもあり裕福で末娘の婚姻用とか随分と呉服も買ってもらった。
 
 オバチャンは病室に炭火の入ったカンテキ(七輪)を持ち込み、網の上で天津甘栗を焼いてくれ、それをお母ちゃんが剥いてくれた。
買物の荷も、過分な見舞金もお母ちゃんが持って帰り、当然のように生活費に消えた。
給料の全てをお母ちゃんに渡すと、中から小遣いをくれる。 それが普通と思い、お母ちゃんの役に立っていることが嬉しかった。

 クリスマスになると、上記の事と結婚前のみっちゃんと行ったパーティの二つを思い出す。
アイが居た頃の此処では、クリスマスを祝う習慣のないアイと僕だし、当時は論文の提出日も間近ともあり、世の動きに気を取られている間もなく、夢中で調べ、書き殴っていた。

 あれから2年目、静かな日々が戻り、クリスマスだからと云っても普段と変わらず、外は強い風が鳴っている。
アイからメールが届いた。中国でも年末を控えて忙しいく、出張続きで外食し太ったのだそうだ。
そして最後に ”奥さん、浮気をしないように”と書き添えてあった。
  メリー・クリスマス  素敵な夜を
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by kattyan62 | 2011-12-25 17:08